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居宅療養管理指導の算定要件を徹底紹介!費用や加算算定率はどのくらい?

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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居宅療養管理指導とは、通院が困難な要介護者を医療専門職が訪問し、療養上で必要な指導や助言を行うサービスです。

病院や診療所、薬局などの事業所は、居宅療養管理指導費として加算を算定することができます。

今回は、居宅療養管理指導費として加算を得るための算定要件や、算定できないケース、報酬体系などについて解説します。

居宅療養管理指導とは

居宅療養管理指導とは、通院が困難な要介護者の自宅に医師や歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などの医療専門職が訪問し、療養上必要な管理や指導を行うサービスです。

自宅で暮らす要介護者の自立した生活をサポートし、療養生活の質を高めることを目的としています。

居宅療養管理指導のサービス内容やメリット・デメリットなどについては、こちらの記事を参考にしてください。

居宅療養管理指導とは?利用方法やメリットを詳しく解説!

各職種が行う居宅療養管理指導

居宅療養管理指導を行うことができるのは、

  •  医師
  •  歯科医師
  •  薬剤師
  •  管理栄養士
  •  歯科衛生士

の5つの医療専門職です。

まずは職種ごとのサービス内容を簡単に確認しておきましょう。

医師・歯科医師

医師や歯科医師は、要介護者の心身の状態や療養環境を確認し、居宅サービスの利用にあたっての注意点や、家族への介護方法の指導、助言などを行います。

また、ケアマネージャーなどの居宅介護支援事業者に対し、ケアプランの作成に必要な情報を提供することも、医師や歯科医師が行う管理指導に含まれます。

なお、居宅療養管理指導の目的はあくまでも“指導”であるため、医師や歯科医師が医療行為を行うことはありません。この点は訪問診療や往診との大きな違いでもあります。

薬剤師

薬剤師が行うサービスは、主に服薬についての管理・指導です。医師や歯科医師の指示に基づき、内服薬が重複していないか調べたり、副作用について説明したり、剤形について助言したりといった管理・指導を行います。

医師や歯科医師と同様に、居宅介護支援事業者に対してケアプランの作成に必要な情報を提供することもあります。

居宅療養管理指導における薬剤師の役割や、報酬単位数などについてはこちらの記事を参考にしてください。

居宅療養管理指導における薬局の算定要件や点数を紹介!算定できない場合についても詳しく解説!

管理栄養士

管理栄養士は、医師の指示のもと、栄養管理についての助言や指導を行います。

飲み込みやすい食事の提案や、低栄養改善のための栄養ケア計画書の作成、糖尿病や慢性腎疾患など疾患に合わせた食事指導など、要介護者の状態に応じて指導内容もさまざまです。

要介護者の家族に対して、食事の介助方法や調理方法を指導することもあります。

歯科衛生士

歯科衛生士は、歯科医師の指示のもと、口腔ケアや入れ歯の清掃を行います。要介護者やその家族が自宅でできる口腔ケアとして、歯みがきの方法や入れ歯の洗浄方法についてもアドバイスします。

また、歯科医師が作成した訪問指導計画に基づき、嚥下機能(飲み込む機能)の維持や回復のために、食事の際の姿勢や食事環境についても指導を行います。

5つの職種のうち、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士が居宅療養管理指導を行うには、医師、歯科医師、あるいはケアマネージャーの指示が必要です。仮に利用者本人や家族が希望したとしても、医師や歯科医師、ケアマネージャーの指示がなければ、居宅療養管理指導を利用することはできません。

居宅療養管理指導の算定要件

居宅療養管理指導の算定要件としては、次の4つを挙げることができます。

①利用者が通院困難な状況であること

②利用者やその家族に療養上の指導を行っていること

③ケアマネージャーに対して、ケアプランの作成に必要な情報を提供していること

④ほかの介護サービス事業所への情報提供や助言を行っていること

居宅療養管理指導を算定するには、まずは「①利用者が通院困難な状況であること」が前提となります。

継続的な管理・指導が必要ないケースや、家族や介護者の手を借りずに通院できるケースでは、居宅療養管理指導を算定することはできません。これは2021年度の介護報酬改定にも明記されています

参考:厚生労働省

この一文が明記された背景には、居宅療養管理指導の利用者が年々増加しているという現状があります。

本来は要件を満たさない軽度者、つまりは自力で通院できる人にまでサービスが提供されることのないように、制度の対象者が明確にされているのです。

「②利用者やその家族に療養上の指導を行っていること」、「③ケアマネージャーに対して、ケアプランの作成に必要な情報を提供していること」については、前述した居宅療養管理指導のサービス内容となります。

ケアマネージャーへの情報提供の方法としては、サービス担当者会議への参加により行うことが基本です。

サービス担当者会議への参加がむずかしい場合、あるいは会議が開催されない場合などは、文書によって情報を提供します。

「④ほかの介護サービス事業所への情報提供や助言を行っていること」は、介護報酬改定によって新たに明文化された算定要件です。

2021年度の介護報酬改定では、居宅療養管理指導費の算定内容において、次のような文言が加えられています。

必要に応じて、利用者の社会生活面の課題にも目を向け、地域社会における様々な支援へとつながるよう留意し、また、関連する情報については、ケアマネージャー等に提供するよう努めることとする

引用:厚生労働省

努力目標としての表現ではありますが、このような文言を居宅療養管理指導の算定要件として定めたところに、地域のつながりを重視し社会的処方の取り組みを推し進めていきたいという厚生労働省のねらいがうかがえます。

これらの算定要件を満たした場合、指導費として算定を得ることができます。ただし、算定できる回数は職種ごとに限度が定められているため注意が必要です。

職種

居宅療養管理指導の算定限度(利用者1人あたり)

医師

月2回まで

歯科医師

月2回まで

薬剤師

病院、診療所勤務

月2回まで

薬局勤務(※)

月4回まで

管理栄養士

月2回まで

歯科衛生士

月4回まで

(※がん末期患者および中心静脈栄養患者については、週2回かつ月8回の算定が可能)

居宅療養管理指導の算定ができない場合

上述した算定要件を満たさない場合、居宅療養管理指導を算定することはできません。

利用者が自力で通院できると判断できる場合、ケアマネージャーへケアプランの作成に必要な情報提供をしていない場合などは、算定できないとされます(担当のケアマネージャーが存在しない場合を除く)。 

そのほかにも、居宅療養管理指導の算定を得られないケースがあります。

例えば、かかりつけの医師(歯科医師)が複数いる場合、それぞれの医師(歯科医師)が居宅療養管理指導を算定することはできません。

利用者1人につき、居宅療養管理指導を算定できる医師(歯科医師)は1人です。薬剤師も同様で、すでにほかの薬剤師が居宅療養管理指導を算定している場合、算定の対象外となります。

 また、薬剤師が居宅療養管理指導を月に2回以上行う場合、算定する日の感覚は6日以上空けなければなりません(がん末期の利用者や中心静脈栄養を受けている利用者に対する場合をのぞく)。

仮に薬剤師が月2回の投薬指導を行い、その間隔が6日以内だったとすると、どちらか一方の訪問日は居宅療養管理指導を算定できないこととなります。

居宅療養管理指導費の報酬

居宅療養管理指導によって得られる報酬は、職種や要介護者の居宅状況によって異なります。報酬体系は次の通りです。

職種

介護報酬

単一建物居住者が1人の場合

単一建物居住者が2~9人の場合

単一建物居住者が10人以上の場合

医師

居宅療養管理指導(Ⅰ)

514単位

486単位

445単位

居宅療養管理指導(Ⅱ)

298単位

286単位

259単位

歯科医師

516単位

486単位

440単位

薬剤師

病院または診療所勤務

565単位

416単位

379単位

薬局勤務

517単位

378単位

341単位

管理栄養士

当該事業所

544単位

486単位

443単位

当該事業所以外

524単位

466単位

423単位

歯科衛生士

361単位

325単位

294単位

  参考:厚生労働省

 医師の行う居宅療養管理指導は、在宅時医学総合管理料(在医総管)および特定施設入居時医学総合管理料(特医総管)を算定しているかどうかによって(Ⅰ)と(Ⅱ)に区分され、報酬単位も異なります。

在医総管とは在宅で療養している利用者に対して、特医総管とは特定施設に入居している利用者に対して、それぞれ通院が困難な状況において、計画的医学管理に基づき定期的な訪問診療を行った場合に算定される診療報酬です。

在医総管や特医総管を算定していない場合は居宅療養管理指導(Ⅰ)が、算定している場合は(Ⅱ)が適用されます。

このほかに、薬剤師が行う居宅療養管理指導として、疼痛緩和のための特別な薬剤の投与が行われている利用者に対し薬学的指導を行った場合、1回につき100単位が加算されます。

また、薬剤師がオンライン上で服薬指導を行った場合、月に1回を限度に、45単位を加算することができます。

居宅療養管理指導の加算算定率

2018年度の介護報酬改定によって、居宅療養管理指導においても、特定地域における加算が創設されました。

離島や中山間地域の要介護者にも介護サービスの提供を促進していくことを目的としています。

特定地域における加算となるのは、「特別地域加算」「中山間地域等における小規模事業所加算」「中山間市域等に居住する者へのサービス提供加算」の3つです。

【特別地域加算】

厚生労働大臣が定める地域に所在する指定居宅療養管理指導事業所の医師などが指定居宅療養管理指導を行った場合は、特別地域居宅療養管理指導加算として、1回につき所定単位数の15/100に相当する単位数を加算する。 

【中山間地域等における小規模事業所加算】

厚生労働大臣が定める地域に所在し、かつ、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合する指定居宅療養管理指導事業所の医師等が指定居宅療養管理指導を行った場合は、1回につき所定単位数の10/100に相当する単位数を加算する。

【中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算】

厚生労働大臣が定める地域に居住している利用者に対して、通常の事業の実施地域を超えて、指定居宅療養管理指導を行った場合は、1回につき5/100に相当する単位数を加算する。

各加算算定事業所数と居宅療養管理指導算定事業所数を基に加算算定率を求めると、次のようになります(2019年調査)。

加算

算定単位

算定事業所数

算定率(事業所ベース)

特別地域居宅療養管理指導加算

所定単位数の15/100単位

288

0.74%

中山間地域等における小規模事業所加算

所定単位数の10/100単位

1,021

2.64%

中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算

所定単位数の5/100単位

252

0.65%

参考:厚生労働省

2021年介護報酬改定における居宅療養管理指導

2021年の介護報酬改定における居宅療養管理指導の改定内容については、こちらの記事を参考にしてください。

居宅療養管理指導に係る2021年介護報酬改定の改定内容を徹底解説!

まとめ

居宅療養管理指導を利用する要介護者の数は増加傾向にあります。

算定を得るには、適切な指導を行うのはもちろんのこと、ケアマネージャーやほかの介護サービス事業所と情報を共有しあい、連携をとってサービスの提供にあたることが求められます。

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