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処遇改善加算とは?制度の作り方は?算定要件は?【介護】

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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この記事では、介護保険における処遇改善加算についてご紹介していきます。

処遇改善加算とは

介護職員の安定的な処遇改善を図るための環境整備とともに、介護職員の賃金改善に充てることを目的に創設された加算です。

加算を取得した事業者は、介護職員の研修機会の確保や雇用管理の改善などとともに、加算の算定額に相当する賃金改善を実施する必要があります。

事業者は都道府県などに加算の届出をした上で、加算請求は毎月の介護給付費の請求と同時に国保連に行う必要があり、支払の委託を受けた国保連は事業者に加算(報酬)を支払い、事業者は介護職員の賃金改善を行います。

介護職員処遇改善加算Ⅱ~Ⅲを取得している場合は、「加算Ⅰ」を取得すると、加算Ⅱに比べ更に月額平均1万円相当、介護職員の方の賃金を上げることができます。

加算Ⅰを取得するためには、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ及び職場環境等要件を全て充たすことが必要となり、また加算の申請や運営指導(実地指導)の際には、介護職員処遇改善計画書と就業規則・給与規程などの必要書類を、都道府県知事などへ届け出る必要があります。

加算の算定率は?

介護職員処遇改善加算の取得状況をみると、加算を「取得(届出)している」事業所が94.1%、
加算を「取得(届出)していない」事業所が5.9%となっています。また、加算の種類別(Ⅰ)~(Ⅴ)の取得状況をみると、加算(Ⅰ)を取得(届出)している事業所が79.8% となっており、ほとんどの介護事業所が加算のⅠを取得している状況です。

処遇改善加算の算定要件

処遇改善加算はⅠ~Ⅲまで存在し、それぞれ算定率と算定要件が異なります。また、令和3年の介護報酬改定にてⅣ~Ⅴは廃止されています。

「キャリアパス要件」「職場環境等要件」とは?

介護職員処遇改善加算の申請のために必要な要件は以下のとおりです。申請できる加算の区分は、どの要件を満たしているかによって異なります。

①キャリアパス要件:Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ

Ⅰ…職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
Ⅱ…資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
Ⅲ…経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること

キャリアパス要件Ⅲによる昇給の仕組みの例

○ 「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組み
○ 「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組み
○ 「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組み

②職場環境等要件:賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取組を実施すること。

また、介護職員処遇改善加算を取得するにあたっては、賃金改善等の処遇改善の内容等について雇用する全ての介護職員へ周知することが必要です。

キャリアパス要件の作り方

1 キャリアパス要件Ⅰについて

① 職位②職責又は職務内容等に応じた③任用要件と④賃金体系を⑤就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知する必要があります。

2各要件の解説

① 職位とは
介護士長、フロアリーダー、主任、上級ヘルパー、中級ヘルパー、初級ヘルパー等、介護職員として2段階以上の職位を定める必要があります。

指定基準上当然配置する職種(管理者、サービス提供責任者、生活相談員、計画作成担当者など)のみの定めだけでは足りず、次項の役割を明確に分けるために階層を定める必要があります。職位の名称は法人独自のもので問題ありません。

② 職責又は職務内容とは
①で定めた2段階以上の職位間における職責や職務内容の違いを定めてください。例としては上級ヘルパーの職責は「困難事例に対応する」「初級ヘルパーを指導する」等、明確な役割分担が必要です。

③ 任用要件とは
介護士長、主任等定めた上位の職位になるためにはどうしたらよいかを定める必要があります。例としては「入社〇年以上」「介護福祉士有資格者」「昇任試験に合格する」等です。

④ 賃金体系とは
職位に応じて給与表を分ける、あるいは上位職位に〇〇手当を付ける等、上位職位の職員を賃金で評価し、各職位に対応する賃金を明示する必要があります。

⑤ 書面での整備とは
就業規則、給与規程等に上記の①~④を記載し、介護職員へ周知してください。なお、キャリアパス表等で就業規則とは別に定めていても問題ありません。届出をしたのみで職員へ周知されていない場合や、途中入社の職員に説明漏れがあった場合などによりトラブルにつながる可能性があるため、十分に理解しやすい説明を行う必要があります。

(2)キャリアパス表の例(例1)訪問系サービス事業所の例

キャリアパス表の例 (例2)通所系サービス事業所の例

キャリアパス要件Ⅱについて 

資質向上のための目標を定め、その実現のための取り組みとして、(2)又は(3)を実施する必要があります。

(1)「介護職員との意見交換を踏まえた資質向上のための目標」の設定事業所として、今年度どのような目標を立てたかを記載する。

(2)研修の機会の提供等
研修計画を定め、研修機会の提供又は技術指導等を実施するとともに、職員の能力評価を行ってください。また、定めた研修計画書を提出する。

(3)資格取得の支援
資格取得のための支援を実施する。(介護職員処遇改善計画書の該当欄に実施する支援の内容を具体的に記載してください。)例としては「資格取得のための費用の助成」や「研修に参加するためのシフトの調整」が挙げられます。

3 キャリアパス要件Ⅲ

経験若しくは資格などに応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けてください。昇給の仕組みの例は次の(1)~(3)を参考にしてください。

(1)「勤続年数」や「経験年数」等に応じて昇給する仕組み
(2)「介護福祉士」や「実務者研修修了者」等の取得に応じて昇給する仕組み
(3)「実技試験」や「人事評価」等の結果に基づき昇給する仕組み
※上記仕組みにおいて、人数制限を設けないこととなります。

職場環境等要件

職場環境要件は、加算Ⅰの取得を行うためには以下の中から全体で必ず1つ以上を取り組む必要があります。 (ただし、記載するに当たっては、選択したキャリアパスに関する要件で求められている事項と重複する事項以外に取り組む必要がある。)

処遇改善加算Q&A

Q:全職員一律に交付金を分配する必要はあるのか。例えば、全常勤職員の賃金改善額は同額又は同水準でなければならないのか。
A:賃金改善見込額等は処遇改善計画書の作成単位全体の平均で見ることとしており、全職員同額の賃金引き上げは行う必要はない。

Q:定期昇給の実施も賃金改善と認められるのか。

A:賃金改善の方法は、ベースアップ、定期昇給、手当、賞与、一時金等があるが、賃金が改善するのであれば問わない。

Q:賃金改善額に含まれる法定福利費等の範囲について。

A:賃金改善額には次の額を含むものとする。
・法定福利費(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、児童手当拠出金、雇用保険料、労災保険料等)における、本交付金による賃金上昇分に応じた事業主負担増加分
・法人事業税における本交付金による賃金上昇分に応じた外形標準課税の付加価値額増加分

また、法定福利費等の計算に当たっては、合理的な方法に基づく概算によることができる。
なお、任意加入とされている制度に係る増加分(例えば、退職手当共済制度等における掛金等)は含まないものとする。

Q:賃金改善実施期間の設定について。

A:賃金改善実施期間については、次の条件を満たす期間の中で、事業者が任意に選択することとされている。
① 月数は交付金支給月数と同じでなければならならない。
② 当該年度の概算交付の根拠となるサービス提供の期間の初月から、交付金支給終了月の翌月までの連続する期間でなければならない。
③ 各年度において重複してはならない。

(例)平成21年度における賃金改善実施期間については下図のようになる。

まとめ

処遇改善加算はほぼすべての事業所で取得が終わっている加算です。手当の仕組みやスキルアップの仕組みが必要になるため、就業規則等の改定を行わなければいけませんが、取得後もしっかりと要件を守り、従業員に還元していく必要があります。

今一度遵守しなければいけないルールを確認し、適正な運営に努めましょう。

 

 

 

 

お役立ち資料:処遇改善加算の取得を目指す方へ

介護事業所向けに、処遇改善加算の取得から運用までを詳しくまとめました。
処遇改善加算の取得を考えている方や、すでに取得しているものの運用に不安を感じる方は、ぜひご一読ください。
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